製造工程について

江戸指物の製造工程は、10の工程に分かれています。

①原材料の木取り⇒②はぎ合わせ⇒③削り⇒④仕口・組手⇒⑤彫り・くり⇒⑥組み立て⇒⑦仕上げ削り⇒⑧研磨⇒⑨塗り⇒⑩仕上げ

①原材料の木取り

まず、全体のデザインをつかんだ後、指物師が仕入れて10年以上乾燥させた、江戸指物の材料となる桑や欅などの銘木材から必要な量が選ばれる。ひとつの木材から、どのくらいの板材が取れ、1本の江戸指物を製作するためにどれくらいの量の木材が必要かを見極める。江戸指物の製作に必要な量の板材の取り方を決定し、板材に挽くこと。

②はぎ合わせ

板と板を接着して、巾の広い板材を得るための技術で、特に柾目の板をはぎ合わせるのに使う。木取りと同様、必要な板材を得るための工程である。

③削り

木取った板を、正確な厚みで正しい寸法に鉋をかけて削る事。

④仕口・組手

江戸指物は、板と板を組み合わせることで製作されるが、その組み合わせ方を仕口といい、江戸指物師によって100種類以上発明されている。この部分を洋家具では、釘や木ねじを使って製作しているが、江戸指物では使わない。板をノミなどで加工するか、別の板片を差し込んだり、ウツギの木から作った木釘を打ったりして製作する。すべてに接着剤を補強として使っている。様々な仕口や組手を必要な場所に施すことによって、堅牢で美しい江戸指物が出来上がるのである。

⑤彫り・くり

江戸指物は板の組み合わせでできているが、それだけでは直線だけで面白くない。そこで、小刀や小ガンナを使い、板に曲線を取り入れる技術である。模様を入れた「透かし」、天板や柱や脚の下を反らせる「テリ」、その他、框戸や引き出しに化粧する「ヒモ取り」「額上げ」など、様々な技法がある。

⑥組み立て

仮組立のことで、接着剤を入れる前に、ホゾの硬さや、水平・直角などを確認する。

⑦仕上げ削り

この段階で、いろいろな面取りを施す。「銀杏面」「匙面」「切り面」など様々な面取りがあり、それぞれ専用の鉋を自作して使っている。その鉋を「面取り鉋」という。そのほか、最終調整を行う。

⑧研磨

江戸指物は、塗装に漆を使うことが多い。その拭漆の仕上がりを最高にするために、研磨はとても重要である。最高の材料である島桑材には、専用のかんな、木賊、椋の葉が順に使われる。目の詰んだ材料なので、一般の紙やすりでは荒くて漆がうまく乗らない。昔の職人の知恵である。

⑨塗り

拭漆等で塗装を施すこと。

⑩仕上げ

引き手や蝶番等をつけ、引き出し・引き戸等を微調整して完成する。

特に重要な工程は、原材料、削り、研磨、である。
デザイン的には、仕口・組手、彫り・くりの工程に特色があるが、江戸指物製品の真の質は材料の選別、削り、研磨の技術が支えているといっていい。当然ながら、鉋・ノミの刃研ぎ、鉋を正確に調整する技術、その他道具を常に正確に調整する絶え間ない努力が、江戸指物の品質を支えている。